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ニキビのPDTに関する論文は全て英文であるため、日本語で書かれたものをここでは掲載します。なお、ニキビに関するものは、この論文で引用しているものを参照していただければ幸いです。
皮膚病診療22巻p1185-1190 2000年
Photodynamic therapy -皮膚疾患への応用-
はじめに
Photodynamic therapy(PDT、光線力学療法)は単独では細胞毒性をもたない特定組織親和性光感受性物質と、その励起光の組み合わせで、酸素の供給下において光化学反応を惹起させることで、選択的に組織を障害させる治療法である。疼痛が少なく選択性を有するこの治療法は、もともと癌をターゲットとしたものであったが、最近は非悪性疾患にも利用されるようになってきた。本稿では、本邦皮膚科でまだなじみの少ないこの治療法、また腫瘍選択性を利用したphotodynamic diagnosis(PDD、光線力学診断)の概要を紹介する。なお紙面の都合上本稿は図表を排したが、それぞれの臨床例は引用文献を参照していただきたい。
[1]Photodynamic therapy(PDT)の歴史と現状
この治療法の歴史は古く、1900年Raab1)がアクリジン色素と光の併用により、ゾウリムシに致死的効果を見出し、1903年Tappeinerら2)は、エオジン色素と太陽光およびランプ光で、腫瘍を壊死させたと報告している。1924年Policard 3)がポルフィリンと腫瘍の親和性を発見したが、それ以来、現在に至るまでPDTで利用する光感受性物質のほとんどに、ポルフィリン誘導体あるいはその前駆物質が使われている。
1960年にMayo clinicのLipsonら4)が、塩酸ヘマトポルフィリンを酢酸と硫酸で処理し、腫瘍親和性の高いヘマトポルフィリン誘導体(HpD)を開発した。さらに1979年、Roswell Park Memorial InstituteのDoughertyら5)が、進行期乳癌の皮膚転位巣や皮膚有棘細胞癌に対し、経静脈的にHpDを投与し、アルゴン・ダイ・レーザーを照射した臨床成功例を報告した。本邦でも1980年、Hayataら6)が内視鏡的に早期肺癌を、1981年Katoら7)や、三村ら8)が、早期胃癌、早期食道癌を、1982年Somaら9)が、子宮頚癌と腟癌を、1983年Tuchiyaら10)が早期膀胱癌をHpDを利用して根治させている。さらに、光感受性物質を投与した後、励起光で、組織を蛍光発色させることで、腫瘍の局在を診断する方法もおこなわれるようになってきた11)。
こうした体内管腔臓器および実質臓器のPDT治療法および診断法が世界的に進歩していくなかで、本邦においてはフォトフリン(ポルフィマーナトリウム、日本レダリー)とエキシマ・ダイ・レーザー(PDT EDL-1、浜松ホトニクス)が1994年に厚生省の認可を受け、またその後フォトフリンⅡも発売され、1996年には保険採用になり、現在、早期肺癌、早期胃癌、早期食道癌、早期子宮癌が適応になっている。また腫瘍以外にも、動脈硬化の治療として、眼科領域では加齢黄斑変性症、さらにMRSAを含む感染症、進行癌への適応拡大などが検討されている。
皮膚科領域においてもフォトフリンをはじめとするポルフィリン環を利用した光感受性物質によるPDTの臨床例の報告が散見される。しかしほとんどの光感受性物質は体内へ投与後、数週から1ヵ月間光感受性を持続させてしまう欠点があるため、皮膚疾患への適応に難しい面があった12)。
現在のPDT研究の大きなテーマの一つに、より優れた光感受性物質の開発がある。光感受性物質はエオジン、メチレンブルーなどの色素も含めると膨大な種類が存在するといってよい。このうち腫瘍などの特定組織に選択的親和性を有し、毒性が少なく、発癌性のないものとすると、ポルフィリンおよびクロリン(ポルフィリン環の1ヵ所が二重結合でないもの)に限られている。現在本邦では、クロリンの誘導体であるNPe6 13)(mono-L-aspartyl chlorin e6)や、ATX-S10 (Na)14)(gallium-porphyrin complex)の臨床治験がおこなわれ、あるいは始まろうとしている。これらの光感受性物質の吸収波長のpeakは670nm前後にあるため、ヘモグロビンの光吸収との競合が少なくなるので出血した病変部に対しより効果的になる。しかしながら体内投与後のwash out時間が数週間なので、治療後の遮光生活はより短くなったものの、依然皮膚科では使いずらいものである。
一方、励起光源は、初期にはarc lampや水銀灯などが利用されたが、1970年代後半からアルゴン・ダイ・レーザーが開発され、励起波長を選択して、高いエネルギーを与えることができるようになった。現在でも欧米ではアルゴン・ダイ・レーザーが主流であるが、1983年曾沢ら15)は従来の持続波であるアルゴン・ダイ・レーザーよりもパルス波としたレーザーのほうがピーク出力が高いことから組織透過性が上がることを報告した。本邦では、これにより、XeClエキシマレーザーが発生する波長308nmの紫外線をローダミン640色素溶液に照射して得られる波長630nmの色素レーザーであるパルス波エキシマ・ダイ・レーザーが開発された。引き続き、QスイッチパルスYAGレーザー励起の光パラメトリック発振器(OPO)を組み込んだ波長可変YAG-OPOレーザー(IHI)が市販されている。また最近はより小型で安価な半導体レーザー(松下電器)が開発されまもなく市場に現れる予定である。
1990年Kennedyら16)が、δ-アミノレヴリン酸(ALA)の投与後、腫瘍内に選択的にプロトポルフィリン?( Pp?)が生じ、励起光により腫瘍が障害されることを報告した。過剰なALAやPp?は化学合成されたものではなく内在物質であり、24時間以内に代謝され、腎排泄されるので、長期間の遮光生活が必要なく、また内服による全身投与に加え、外用による局所投与が可能となる施術である17)。そのため皮膚科領域では、最も有用なPDT手法として、認知されつつあり、2000年春米国FDAにおいてALA-PDTは日光角化症の治療法として認可されるに至った。